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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)18437号 判決 1993年3月05日

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告らに対し、それぞれ金五六六四万九八四四円及びこれに対する昭和六二年一二月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  (当事者等)

(一) 薗部和彦(以下「和彦」という)は、昭和三年一月二二日生まれの男性で、丸紅株式会社の取締役を経た後、株式会社丸紅保険センターの代表取締役の地位にあった者である。薗部智子(本訴提起後の平成三年二月九日死亡。以下「智子」という)は和彦の妻である。原告薗部麻美子及び同薗部仁彦は和彦と智子の子である。

(二) 被告は、東京女子醫科大学医学部医学科等を設置している学校法人であり、東京都渋谷区渋谷二丁目一五番一号所在の東邦生命ビル内に東京女子醫科大学附属成人医学センター(以下「成人医学センター」という)を設置し、運営している。

(三) 三輪洋子医師(以下「三輪医師」という)は、成人医学センターに勤務する医師である。

2  (本件の経過)

(一) 和彦は、昭和六二年一二月七日午前九時一〇分ころから成人医学センターにおいて、内視鏡検査を受ける準備のため、三輪医師及び臨床検査技師から表面麻酔剤キシロカイン(商品名。薬品名はリドカイン、以下「キシロカイン」という)の四パーセント溶液(一ミリリットル中に塩酸リドカイン四〇ミリグラムを含有する薄い橙色の澄明な液、以下「キシロカイン四パーセント溶液」という)二〇CCによるうがいをさせられ、また経口表面麻酔剤キシロカイン・ビスカス(一〇〇ミリリットル中に塩酸リドカイン2.0グラムを含有する無色〜微無色澄明の粘性の液、以下「キシロカイン・ビスカス」という)五CCを投与されたが、内視鏡挿入直前の同日午前九時三〇分ころ、突然いびきをかき始め、応答不明瞭になり、続いて痙攣、呼吸停止、心停止が生じた。

(二) 和彦は、右容態急変から同日午前一一時三〇分ころまで成人医学センターの医師によって蘇生措置が施されたが、救急車で東京女子醫科大学附属病院救急センターに搬送され、再度蘇生措置が施されたものの、同日午後一時一〇分死亡した(本件事故という)。

3  (和彦の死亡とキシロカイン及びキシロカイン・ビスカスの投与との因果関係)

キシロカインは、アミド型局所麻酔薬であり、これを投与する場合の極量(基準最高用量)は二〇〇ミリグラムであるところ、和彦に対する前記投与量の合計は右極量の4.5倍に当たる九〇〇ミリグラムである上、これが道薬剤の吸収が最も早い口腔、咽喉頭及び気道粘膜に接触させる方法で投与された結果、和彦は意識喪失に続く、痙攣、呼吸停止、心停止を引き起こす局所麻酔中毒を発症して死亡したものである。

4  (診療契約の成立)

(一) 和彦は、昭和六〇年から成人医学センターの会員となって、年二回の定期健康診断を中心とする診療を受け、被告との間に診療契約を締結していた。

(二) 仮にそうでないとしても、丸紅株式会社と被告は第三者のためにする診療契約を締結し、和彦は右契約に基づき成人医学センターにおいて定期健康診断を受けることによって受益の意思表示をした。

5  (三輪医師らの注意義務違反ないし過失行為)

三輪医師及び成人医学センターに勤務する臨床検査技師は、キシロカインの過剰投与によって局所麻酔中毒が発生しないように注意すべき義務がありながら、右注意義務に違反し、本件事故を発生させた。

6  (被告の債務不履行責任及び使用者責任)

(一) 被告の履行補助者である三輪医師及び臨床検査技師が、和彦の治療に当たり前記5記載の債務不履行により和彦を死亡させたものであるから、被告は原告らに対し診療契約の債務不履行に基づき後記7記載の損害を賠償する責任がある。

(二) また、被告の被用者である三輪医師及び臨床検査技師の不法行為により本件事故は発生したものであるから、被告は原告に対し、民法七一五条に基づき後記7記載の損害を賠償する責任がある。

7  (損害)

(一) 逸失利益

六三二九万九六八八円

和彦は、死亡当時五九歳であり、本件事故がなければ、平均余命の二分の一である一〇年はなお就労することができた。同人のこの間の一年当たりの所得は、昭和六二年一月から同年一一月までの間の所得実績一〇七三万五〇〇〇円に基づき一一七一万〇九〇九円と算定され、すると、同人の逸失利益は次の計算のとおり六三二九万九六八八円となる。

1171万0909円×0.7(生活費控除三割)×7.7217(昭和六一年簡易生命表による男子五九歳の平均余命の二分の一=一〇年のライプニッツ係数)

(二) 慰謝料 四〇〇〇万円

(三) 葬儀費用 一〇〇万円

薗部智子は和彦の葬儀費用として一〇〇万円を支出した。

(四) 弁護士費用 九〇〇万円

8  (結論)

よって、原告らはそれぞれ被告に対し、診療契約の債務不履行あるいは不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償として五六六四万九八四四円及びこれに対する和彦の死亡の日の翌日である昭和六二年一二月八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は全部認める。

2  同2(一)及び(二)の事実は認める。ただし、蘇生措置は、三輪医師により和彦がいびきをかき始めるなどの異常発生直後から開始され、また、救急車中においても同乗した成人医学センター所属の医師及び検査技師により継続して行われ、東京女子醫科大学附属病院救急センターにおいても更に継続されている。

3  同3の事実のうち、キシロカインの投与量は認め、その余は否認する。

(一) キシロカイン注射剤及び点滴用の薬剤は劇薬として指定され、極量を定めるよう日本薬局法通則に規定されているが、本件で用いたキシロカイン四パーセント溶液は普通薬であり極量の定めはない。

(二) キシロカインの吸収が活発な部位は気道であり、口腔、咽頭ではない。うがいの場合は、スプレー等で噴霧するのと異なり、間けつ的に粘膜と接触するのであって、ほとんどの量は唾液と共に吐き出される。

(三) 局所麻酔中毒の症状は、初期には刺激症状が、続いて抑制症状が現れ、神経系では多弁、興奮、不安、不穏、酩酊や舌のもつれ、小筋肉の蓄搦などがみられ、更に進むと精神錯乱や痙攣、意識障害が出現する。循環系では初期には脈拍数増加、血圧上昇、心拍出量の増加がみられ、続いて低血圧、徐脈、心室細動や心停止に移行する。呼吸も初期には呼吸数の増加、換気量の増大がみられるが、痙攣発作の発来とともに停止する。

ところが、本件においては、意識消失に先だって何ら異常所見は認められず、急変直前に和彦は医師の問いかけに対し返答していたこと、痙攣に先だって筋攣縮等の神経系の刺激症状は認められなかったこと、局所麻酔中毒にみられるように痙攣、昏睡、呼吸停止、心停止の順ではなく、昏睡、痙攣、呼吸停止、心停止の順に発現したこと、血圧低下が急激であり、意識消失時に血圧が一〇〇前後あったものが、その後わずかの間に血圧測定不能となったこと等から判断すると局所麻酔中毒であるとは認められない。

4  同4(一)の事実は否認する。同(二)は被告は丸紅株式会社との間で同会社従業員らを対象とする診療契約を締結したものである。

5  同5ないし7の事実は否認する。

6  同8は争う。

第三  証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1(当事者等)の事実は当事者間に争いがない。

二  請求原因2(本件の経過)について

同(一)の事実は当事者間に争いがなく、同(二)の事実は蘇生措置が開始された時間及び施された期間を除き当事者間に争いがない。

右争いのない事実に成立に争いのない甲第五号証、乙第一ないし第五号証を総合すれば、次の各事実を認めることができる。

1  和彦は、昭和六二年一一月七日、成人医学センターにおいて定期健康診断を受け、胃部X線検査の結果、高度の食道裂孔ヘルニアと診断され、内視鏡検査を受けるよう指示された(乙二)。同人は、昭和六一年一二月三日にも内視鏡検査を受け、食道裂孔ヘルニア、食道潰瘍瘢痕、胃の穹窿部に腫瘤が認められているが、右時点では異常なしと診断されており(乙四)、また、昭和六二年五月二日の定期健康診断の際も胃部X線検査により食道裂孔ヘルニア、胃炎、球部の隆起性病変の疑いありと診断されていた(乙一、二)。なお、和彦は、一〇歳ころから気管支喘息に罹患し、三〇歳から三七歳ころはいったん鎮静化したものの、毎年秋ころには強い発作があり一週間程度会社を休む状態であった(乙三)。

2  和彦は、昭和六二年一二月七日、内視鏡検査のため成人医学センターに来院し、三輪医師(昭和五五年五月から同センターに勤務する消化器内科の専門医)によって胃部の内視鏡検査を受けることになった。同医師は、和彦のカルテ、一番新しい胃のレントゲン写真及び以前の内視鏡検査のファイル等の資料を検討した上、同人が高血圧であること、気管支喘息であること、以前に同センターにおいて内視鏡検査を受けていることを確認し、内視鏡検査前の視診と問診を看護婦に指示した。

そして、午前九時一〇分ころ、同センターに勤務する臨床検査技師が和彦に対し、ガスコン一〇CCを飲み込ませ、さらにキシロカイン四パーセント溶液二〇CCによるうがいをさせた。同センターにおけるうがいの指示は、五回か一〇回くらいうがいをさせた後、口の中に残ったキシロカイン液を吐き出させるというものであった。その後、同人は九時二〇分ころ硫酸アトロピン一アンプル、ブスコパン一アンプルの筋肉内注射を受け、九時三〇分ころ臨床検査技師の指示のもと、キシロカイン・ビスカス(二パーセントキシロカイン)五CCを服用したまま、内視鏡検査台に横臥した。続いて、三輪医師は、検査時にルゴール使用の可能性があったため、和彦に対しヨードアレルギーの有無を問診したところ、同人から右アレルギーのないことを告げられたので、同人を左側臥位にさせて内視鏡視度を調整した後、内視鏡を挿入しようとしたところ、同人は半ば開口していびきをかき始め、「薗部さん」との呼びかけに対し、何か声を出して返事はするがはっきりとした言葉は発せられなかった。

同医師は和彦の橈骨の動脈に触れたところ、脈拍を正確に数える余裕はなかったものの八〇以上の頻脈と感じ、血圧を測定すると一〇〇をやや超える程度であった。また、同医師は和彦がいびきをかき始め、応答不明瞭となった時点で同人を内視鏡検査室の隣の回復室に運び、点滴路を確保し、ポタコールR五〇〇ミリリットル、ソルコーテフ一〇〇〇ミリグラム、ソルコーテフ一二〇〇ミリグラムを静脈注射した。更に、九時四〇分ころ、酸素八リットルを吸入し、エアウェイを挿入して舌が喉の奥に落ち込むのを防いで気道を確保し、昇圧剤ネオフィリン一アンプル等を投与したが、全身性の痙攣が生じたため、ボスミン二アンプル、塩酸カルシウム二アンプル、メイロン二アンプルを血管注射したが、九時五〇分ころ、呼吸が停止するとほぼ同時に心臓が停止した。同人の自発呼吸が止まったのでアンビューバックでの強制呼吸をしながら気管内にチューブを挿入して肺の中に酸素が送り込まれるようにし、また、心臓マッサージを開始し、塩化カルシウム二アンプル、メイロン二アンプル、ボスミン二アンプルを点滴注入箇所の横から静脈注射した。右の間も人工呼吸を続けており、一〇時ころには、直流除細動をかけたが反応はみられなかった。一〇時一五分ころ、ボスミン二アンプルを心腔内に注射し、ソルコーテフ二〇〇ミリグラムを血管注射した。一〇時三〇分ころ、塩化カルシウム二アンプル、ノルアド二アンプルを管注し、再度直流除細動をかけたがやはり反応はみられなかった。更に、ボスミン一アンプルを心腔内に注射し、メイロン二五〇ミリリットルを側管より血管注射した。一〇時三五分ころノルアド二アンプルを血管注射し、ソルコーテフ一グラム(うち二分の一は血管注射)を投与した。一〇時四五分ころ、カルニゲン一〇アンプルを投与し、直流除細動をかけた。一一時一五分ころ、ボスミン一アンプルを心腔内に注射した。一一時二〇分ころ、ソルコーテフ一グラムを血管注射し、一一時三〇分ころ、ボスミン一アンプルを投与し、一一時四〇分ころ心臓マッサージ等の心肺蘇生法を続行し、点滴ポタコールから五パーセントブドウ糖二五〇ミリリットルに、メイロン二五〇ミリリットルを側管より注入した。右のように直流除細動を何回か繰り返したところ、不安定ではあるが心臓の心室性のリズムが現れてきた。右のような蘇生措置を施行している間に各持ち場から駆けつけていた医師六、七人の判断で、和彦を東京女子醫科大学救急センターに運ぶことを決定し、心電図測定装置を取り外して一一時四五分ころ心肺蘇生法を続行したまま救急車で右救急センターに搬送した。

一二時一五分ころ、右救急センターにおいて和彦に対しボスミンを心腔内に注射したところ、心電図上に心電図波形が出現したが実際の心搏動、脈拍は認められず、心電図上の波形も二、三分で消失し、その後心肺蘇生術を施行しても蘇生せず、午後一時一〇分同人の死亡が確認された(乙四、五)。

三  請求原因3(和彦の死亡とキシロカイン・ビスカスの投与との因果関係)について

1  原告は和彦の死亡原因につき、キシロカインの過剰投与による局所麻酔中毒であり、他に死亡原因はない旨主張するので以下検討する。

被告は右主張を否定した上、和彦の死亡原因を確定的に明らかにすることは不能であると反論するところ、三輪医師及び外科の鈴木医師は、和彦は内視鏡検査の前処置を受け、前記経過を辿って死亡するに至っているが、臨床上はその死因について、不整脈死、薬剤等によるショック死、心筋梗塞、脳卒中等が推定されたが、右いずれとも断定できないと判断している(乙五)。また、同人の死後三時間一〇分を経て行われた東京女子醫科大学病理学教室による剖検診断でも、臓器不全を来すほど高度とは認められない高血圧性変化(心肥大、臓器内細動脈の硬化)、動脈硬化、慢性肺変化(軽度ながら認められる肺気腫、細気管支炎)、著明な急性変化として呼吸不全を示唆するに十分な肺浮腫・出血、細気管支内の粘液性プラグ(栓)の存在が認められ、異常な反応が肺毛細血管の透過性の亢進、気管支線の過分泌などを中心に進行したこと、アレルギー或いは神経循環性の急激な変化が発症の引き金になったことが推定されたものの、その要因を特定することはできなかった(乙五)。

2  そこで、検討を進めるのに、成立に争いのない甲第四、第七ないし第一〇号証、乙第六、第一〇号証によれば次の事実が認められる。

(一)  キシロカイン四パーセント溶液の効能書によれば、基準として説明されている用量は八〇から二〇〇ミリグラムであり、また、キシロカイン・ビスカスの効能書によれば、右用量は一〇〇から三〇〇ミリグラムである(甲七)。

(二)  局所麻酔中毒は投与された局所麻酔薬が血中濃度を増加させることによって生じる例が最も多いが、血中への吸収は口腔、咽頭粘膜からの場合、気道粘膜からの吸収に似て早いとの指摘もある(甲四)。

(三)  局所麻酔中毒の中枢神経系作用による症状としては、刺激症状及び抑制症状があり、前者には、昂奮、見当識の喪失、舌のもつれ、痙攣等の大脳皮質に対するもの、血圧の上昇・頻脈、頻呼吸・不規則な呼吸、悪心・嘔吐などのように循環中枢、呼吸中枢、嘔吐中枢等延髄に対するものがあり、後者には、意識喪失等の大脳皮質に対するもの、血圧低下・頻脈・徐脈、呼吸の異常・呼吸停止などのように延髄の循環中枢、呼吸中枢等に対するものがある(甲四)。

(四)  局所麻酔中毒における中枢神経系作用の機序としては、初期には局所麻酔薬が血液・脳関門を通過して脳実質や脳脊髄中に移行して種々の中枢神経系の刺激症状を起こし、更に抑制症状をもたらすというのが典型的であるが、逆に嗜眠、反応性の低下、酩酊様など抑制症状から始まるものもあり、更に症状が強くなると亢奮、痙攣等の刺激症状を現し、次いで意識喪失、呼吸抑制、呼吸停止等の抑制症状を示すものもある。

(五)  局所麻酔薬の副作用による死亡例の臨床症状としては、痙攣、呼吸不全、呼吸停止の経緯を辿るものが多い(甲四)。

3  右認定事実に前記和彦の臨床経過を併せ考察すると、和彦に投与されたキシロカインの総量は効能書に説明されている基準量(後記認定のとおり極限値ないし危険値というものではない)よりも多量であり、これが口腔から咽頭にキシロカイン四パーセント溶液をうがいの方法で接触させたことにより、活発に吸収されたものと推認されないでもなく、また、本件における和彦の初期症状は半開口、いびき、応答不明瞭というものであり、これらは中枢神経系への作用のうち抑制症状とみることができ、その後の頻脈は循環中枢の刺激症状、大脳皮質の抑制症状のいずれとも判然とはしないものの、次いで発生した全身性の痙攣は大脳皮質に対する刺激症状とみられ、呼吸停止、心停止は呼吸中枢に対する抑制症状であるとみることができるところ、右全身性痙攣、呼吸停止、心停止を経て死亡に至った過程は、局所麻酔薬の副作用による死亡例との類似性を認めることができるものである。

4  また、千葉大学医学部麻酔学教室教授水口公信作成の私的鑑定書(成立に争いのない甲第一三号証、以下「水口鑑定」という)は、和彦の死亡原因について、①本件において、口腔・咽頭粘膜の表面麻酔に使用したキシロカイン四パーセント溶液二〇ミリリットルの「うがい」と二パーセント・キシロカイン・ビスカス五ミリリットルを「口に含ませ内服した」投与量は、厚生省通知「使用上の注意」からみてもはるかに多量であり、局所麻酔薬の血中濃度が急速に上昇して局所麻酔薬の急性中毒症状を起こしたとしても不思議ではないと考えられる、②局所麻酔薬中毒の初期症状は、舌のもつれ、眩暈、視力・聴力障害から注意集中の欠如、耳鳴り、失見当識、迷妄、次いで震顫、筋肉の攣縮、多弁などの症状が認められ、さらに十分な中毒量に達すると全身痙攣を起こすが、この時、脳酸素消費量は著明に増加し、最終的には意識喪失、昏睡、呼吸停止、心停止に至るものであるところ、本件における和彦の臨床経過とよく一致する。ただし、本件は急速に症状が進行したために文献等に示されているような症状がすべてに順序よく典型的に発症していないが、このような例は一般的に臨床上よくあることであって、おそらく個体差や血中濃度の絶対値や上昇速度の急峻さ等が複雑に関係しているものと思われる、③局所麻酔薬が中毒量に達する前は中枢作用により血圧の軽度上昇、頻脈を認めることが多いが、中毒量に達すると中枢作用で循環系の抑制作用が強く起こり、また、局所麻酔薬の心筋への直接作用による刺激伝導系の抑制は徐脈や心停止を起こすものであるところ、本件においては初期症状として頻脈と血圧の軽度上昇があり、続いて痙攣を経て最終的には心・循環系障害をもたらしたものであり、局所麻酔薬中毒における強い循環系抑制と推測される、④局所麻酔薬が中毒量になると、呼吸中枢抑制、更に循環不全が加わって呼吸抑制は増強し、無呼吸になることろ、本件においては恐らく最終的に延髄の呼吸中枢の抑制が起こり、循環不全と相まって呼吸不全も死亡の一因となったものと考えられる、⑤局所麻酔薬によるアレルギー反応(アナフィラキシー・ショックまたは薬剤アレルギー)は非常に少量の局所麻酔薬によっても起こり、皮膚の発赤あるいは発疹、著明で特有な全身反応(特に喉頭浮腫に起因する気道狭窄音と窒息)がみられるが、本件はそれらを示す症状は存在せず、解剖所見でも右喉頭浮腫を認めておらず、また、キシロカインは他の局所麻酔薬と比較して薬剤アレルギーが起こることの少ない薬剤として知られているから、本件においてアレルギー反応の発生があったとはいい難い、⑥本件の臨床経過中には、担当医らは誰も喘息発作時に特有の呼吸パターンを目撃しておらず、急激な低酸素による全身性チアノーゼ、患者の苦悶状態も認めておらず、和彦の気管支喘息が原因となって、うがいの後に急性の喘息様発作を起こして、低酸素血症や高炭酸ガス血症のために心停止に至った可能性は極めて少ないなどと指摘した上で、本件について、胃内視鏡検査に先立って行われた口腔・咽頭粘膜の表面麻酔の目的で用いた過量の局所麻酔薬キシロカインによる急性中毒が原因となって和彦は死に至ったと考えるのが最も妥当であると判断している。

5  しかし、他方で、右甲第一三号証、右乙第六号証、成立に争いのない乙第一六、第一九号証及び証人水口公信の証言によれば、次の事実及び所見が認められる。

(一)  局所麻酔薬の口腔、咽頭からの吸収は遅いとされ(乙一六)、キシロカインの粘膜表面麻酔の場合、使用キシロカイン量及び体重一キログラム当たりのキシロカイン量と、最高血中濃度との間には何ら認むべき相関関係はみられなかったとの報告がされている(乙六)。

(二)  本件におけるキシロカイン四パーセント溶液の投与方法は、うがいによるものであり、間けつ的に口腔、咽頭粘膜に接触し、うがいの後はほとんどが排出されるものであって、塗布あるいは噴霧する場合と同等の吸収効果があるとは考えられない。

(三)  本件が局所麻酔薬中毒の典型的な症状・順序と異なる発症経過を辿った理由として、水口鑑定は、個体差や血中濃度の絶対値や上昇速度の急峻さ等が複雑に関係していると推測しているが、和彦は昭和六一年一二月三日にも本件と同じ方法で内視鏡検査を受けており、その際本件のような症状は現れなかったのであり、本件事故発生については個体差を根拠とするのは疑問であり、また、血中濃度の絶対値は本件では明らかではなく、上昇速度の急峻さについても本件における臨床症状からの推測の一つにすぎない。

(四)  人の全身性アナフィラキシーショックにおける死亡症例の死後所見として、(1)肉眼並びに顕微鏡検査で認められる、下気道の閉塞の結果生じたと思われる急性肺気腫、(2)下咽頭、喉頭蓋、喉頭それに気管にまで及ぶ上気道の浮腫、(3)早期の徹底的な検査にもかかわらず有意な所見を呈しない例、の三つのパターンに分かれると指摘する文献もあり(乙一九)、本件で喉頭浮腫に起因する気道狭窄音と窒息が認められないことをもって、アナフィラキシーショックではないと断定することはできない。

(五)  水口鑑定は、キシロカインは他の局所麻酔薬と比較して薬剤アレルギーが起こることの少ない薬剤であると指摘するが、キシロカインによってアナフィラキシーショックが起きたケースも存在する。

(六)  本件の臨床経過中には、確かに喘息発作と思われる苦悶状態が認められていないが、気管支喘息における右発作は本件症例においてどの時点で発症しても不自然ではないところ、仮に末期の段階で喘息発作が生じたとするとかかる苦悶状態がなかったことをもって喘息発作の発症を否定することはできない。

右に認定したところによれば、水口鑑定の結論を直ちに採用することには疑問があるといわざるを得ない。

6  さらに、鑑定人高橋敬蔵の鑑定の結果(以下「高橋鑑定」という)は、和彦の死亡原因について、①同人に対する肺機能検査の結果により、比肺活量の正常値が八〇パーセント以上であるのに対し、昭和六二年五月二日測定の比肺活量は五一パーセントと中程度の障害があり、同年一一月七日測定では三一パーセントと高度の低下を示し、中等度より高度にわたる拘束性換気障害を示し、肺機能検査で重要な指標となる一秒率は正常値が七〇パーセント以上であるのに対し、昭和六一年五月一二日の測定では62.8パーセント、昭和六二年五月二日の測定では五八パーセントといずれも軽度の障害を、同年一一月七日の測定では四八パーセントと中等度の閉塞性換気障害を示しており、少なくとも中等度より高度にわたる混合型換気障害を示していたことや、同人は一〇歳のころから気管支喘息の既往があることなどから、同人は慢性的気管支喘息を有していたと判断される、②昭和六二年五月二日及び同年一一月七日の測定では和彦の肥満度は+二四パーセントであり、呼吸仕事量も増大し、低酸素血症及び高炭酸ガス血症の傾向を増し、循環系に対する影響が大であったと推察されること、また、高血圧症、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、動脈硬化指数の上昇等が見られていたことなどから、同人は慢性的気管支喘息、肥満などを基礎疾患として有していたと判断される、③局所麻酔薬の血中濃度の上昇によって見られる中毒反応は、一般に投与後五分ないし三〇分ころに発生する遅延型反応が多く、初期には中枢神経系の刺激症状を呈し、めまい、不安、興奮、多弁となり、ときに悪心、嘔吐がみられ、次いで呼吸促迫、血圧上昇を来し、更に、四肢・顔面のふるえから全身性痙攣へと移行し、痙攣が発生すると呼吸運動は不能に陥り、チアノーゼを来し、末期には意識及び反射の消失、呼吸停止、蒼白、血圧低下を来すところ、本件において和彦の当初の症状は、半開口、いびき、応答不明瞭というものであり、これは意識障害あるいは中枢神経系の抑制状態と考えられること、そして、中枢神経系が刺激されると脈拍数の増加、血圧の上昇、呼吸数の増加が発生することになるが、本件における九時三〇分ころから四〇分ころまでの同人の症状は、脈拍数が八〇/分以上(成人の場合、頻脈とは一〇〇/分以上をいう)でありそれほど高度なものとは考えられず、血圧も約一〇〇MMHGちょっと(成人の正常血圧は収縮期血圧が約一二〇MMHG、拡張期血圧が約九〇MMHG)であり、局所麻酔薬投与後における血圧の上昇、脈拍数の増加は明らかではなく、中枢神経系の刺激症状が発生したとすることは困難であること、九時四〇分ころに行われた静脈点滴注射の際の刺針時の防御反応(注射の針を刺した時の疼痛刺激に対する反応)がなかったことは中枢神経系の抑制状態が強いものであったとも推察されること、これら本件における和彦の初期症状は中枢神経系の抑制状態のものであり、局所麻酔薬中毒の初期症状とは異なるものであることなどから、本件において中枢神経系の刺激症状であるとされる全身性痙攣の発生する前に意識障害などの中枢神経系抑制状態にあったとすれば、本件の全身性痙攣は局所麻酔薬以外の原因によって発生したと解釈する必要がある、④和彦の剖検記録によれば、急性の変化として最も著明なものは肺浮腫・出血、細気管支内の粘液性プラグの存在であり、この所見は呼吸不全を示唆するにほぼ十分なものであるとされており、肺に重篤な変化が惹起され、これが原因となって呼吸停止、次いで、心停止に至ったと推察できるが、気管支喘息の肺の病理学的所見としては、気管支粘膜の肥厚・充血、水腫、さらに、粘液腺の肥大と分泌亢進像、内腔を充満した分泌物(喀痰=プラグ)などが挙げられているから、本件で認められた所見は気管支喘息の場合と極めて近似していること、局所麻酔薬中毒による死亡事例における肺の病理学的所見は、蒼白で溢血点は見られず、泡沫に乏しい希薄液が中等量認められており、また、右事例における組織学的所見は、全葉とも急性化膿性肺炎、肺胞内に炎症性細胞、フィブリン塊を充していたというものであり、本件の所見とは異なる、⑤本件の胃内視鏡検査の施行される約一〇日前の一一月二七日に38.7度の発熱を伴った気管支喘息が発生したことなどから、本件の検査当日には気管支喘息の発生し易い状態にあったといえるなどと指摘した上、以上の点から鑑定主文として本件で和彦の死亡原因を局所麻酔薬中毒と断定するには問題があり、和彦の有する基礎疾患である気管支喘息及び肥満が影響した気管支喘息発作が死亡原因と推測されるとしている。

7  なお、前掲甲第四、五号証及び証人高橋敬蔵の証言によれば、高橋鑑定は局所麻酔中毒の初期症状は、中枢神経系の刺激症状であり、その後全身痙攣を経て中枢神経系の抑制症状が認められるはずであるのに、本件における和彦の初期症状は半開口、あくび、応答不明瞭といういわゆる中枢神経系の抑制症状であるから、局所麻酔薬中毒とは異なるとするところ、局所麻酔薬中毒の症状には速発型、遅発型、蓄積型等があり、遅発型においては症状も千差万別であり、局所麻酔薬が中枢神経に与える作用としては、中枢系の刺激症状で始まることもあれば、逆に嗜眠、反応性の低下、酩酊様など中枢系の抑制症状で始まるものもあり、また、呼吸不全は、肺に重篤な変化が惹起されたという事態以外にも局所麻酔薬中毒の場合にも起こるとする文献もあること(甲四)、高橋鑑定が局所麻酔中毒における肺の病理学的所見及び組織学的所見として例示する患者は五五日間人工呼吸で管理されており、本件のような急死の症例と対比することは疑問であること、一般的に気管支喘息の発作が起こると気道が閉塞又は狭窄するため、患者は呼吸困難となり苦悶状態に陥り、空気の抵抗が強くなるので喘鳴が生じ、更に進行すると低酸素状態になり全身チアノーゼが起こり、仮に挿管しても気管支が痙攣しているから空気が入っていかないという状態も認められるが、本件における和彦の臨床経過には右諸症状は一切認められないこと、本件においてはチアノーゼをはじめとする血圧、脈拍などの低酸素血症あるいは高炭酸ガス血症の発生を示す臨床症状の有無については不明であること等が認められるとしても、本件において和彦の死亡原因が気管支喘息の発作である可能性が高いことは否定することはできない。

以上の認定を総合の上考察すれば、合理的な疑いを差しはさむ余地のないほど高度の蓋然性をもって、和彦の死亡原因を局所麻酔薬中毒であると認めることはできないというべきであり、他に原告ら主張の局所麻酔中毒の発症を認めるに足りる証拠はない。

したがって、本件請求は和彦の右死亡原因が局所麻酔薬中毒であることを前提とする点で既に理由がないものであり、失当である。

四  請求原因5(三輪医師らの注意義務違反ないし過失行為)について

本件請求が原告ら主張の因果関係の点で理由のないことは前記のとおりであるが、三輪医師らの和彦へのキシロカイン投与には過失を認めることもできないので、この点についても触れておく。

1  原告らはキシロカインが過量に投与されたと主張する。しかし、キシロカインの投与量及び投与方法につき、高橋鑑定によれば(1)キシロカイン・ビスカス二ないし五ミリリットル(キシロカイン自体の量は四〇ないし一〇〇ミリグラム)を下根部に注入し、二分から五分間うがいをしてそのままにしておく方法、(2)四パーセントキシロカイン液二ミリリットルを等量の水に混ぜたもの(キシロカイン自体の量は八〇ミリグラム)で約五分間かけてうがいをさせる方法、(3)キシロカイン・ビスカス五ミリリットル(キシロカイン自体の量は一〇〇ミリグラム)を下根部で五分間含ませた後に嚥下させる方法、(4)キシロカインゼリー一〇ミリリットル(キシロカイン自体の量は一〇〇ミリグラム)を口腔奥に数分間保持し、次いで嚥下させる方法があるとし、捲綿子を使用してキシロカインを咽頭部に塗布する場合、スプレーによる噴霧、キシロカイン液によるうがいでは過剰投与になり易いので注意が必要であると指摘した上、本件において計算上投与されたキシロカインの量(九〇〇ミリグラム)は一般的に言われている最大安全使用量よりも過量といえるが胃内視鏡検査の前処置として必要な量であったと理解できるとした上、鑑定主文として、本件において局所麻酔薬の使用量が適正であったか、不適正であったかを断定することは不能であるとしている。

2  また、前掲甲第四、第七、八号証、成立に争いのない甲第一一号証の一、乙第七ないし第九号証、弁論の全趣旨により成立を認める乙第一一ないし第一五号証によれば、次の事実が認められる。

(一)  キシロカイン液四パーセントの効能書には、その用法・用量として、塩酸リドカインとして、通常、成人では八〇から二〇〇ミリグラム(二から五ミりリットル)を使用すること、なお、年齢、麻酔領域、部位、組織、体質により適宜増減することと記載されており、(甲七、八)、また、キシロカイン・ビスカスの効能書にも、その用法・用量として、塩酸リドカインとして、通常、成人では一回一〇〇から三〇〇ミリグラム(五から一五ミリリットル)を一日一ないし三回経口的に投与すること、なお、年齢、麻酔領域、部位、組織、体質により適宜増減することと記載されており(甲七)、右薬剤については極量又は基準最高用量の定めはなく、年齢、麻酔領域、部位、組織、体質により医師の裁量によるべきものとされている。

(二)  本件当時の内視鏡検査法として、局所麻酔剤として二パーセントキシロカイン・ビスカス五ないし一〇ミリリットルによるうがいのほかに、八パーセントキシロカインスプレーを噴霧して十分に咽頭麻酔を行い、更にマウスピースの内側とファイバースコープの本体にキシロカイン・ゼリーを塗布あるいはキシロカイン・スプレーを噴霧しておくよう提唱する文献もあった。

(三)  成人医学センターにおいては昭和五七年一月から昭和六二年一二月まで内視鏡検査施行の前処置として、注射薬硫酸アトロピン(0.5ミリグラム)一アンプル、コリオパン一アンプル、キシロカイン・ビスカス五ミリリットル、四パーセント・キシロカイン液二〇ミリリットル、ガスコン・ドロップ五ミリリットルの投与がなされていること(乙一五)、そして右投与の具体的な方法は、患者に対し、硫酸アトロピン一アンプルとブスコパン一アンプルを筋肉注射し、ガスコン・ドロップ一〇CCを飲み込ませ、四パーセント・キシロカイン液を二〇CCコップに入れて患者に渡し、口に含み得る量を含ませ、口の奥(のど)でうがいし、口に含んだ液全量をもとのコップに戻し、一息休んで再び同様のうがいをし、これを五回から一〇回繰り返し、次に上記のうがいで異常がなければキシロカイン・ビスカス五CCを口の中に含ませ、そのまま内視鏡検査用のベッドに上がらせ、仰向けで口の奥に含ませ、数分後医師の指示で飲み込ませ、その後左側臥位とし内視鏡を挿入するというものである(乙一三)。

(四)  和彦は成人医学センターにおいて昭和六一年一二月三日、食道裂孔ヘルニアの疑い及び体重減少を理由として、前記同センターで施行されている具体的方法と全く同じ方法で食道及び胃部の内視鏡検査を受け、その際本件のような症状は現れなかった。

(五)  和彦は本件死亡時五九歳であり、特に高齢というものではなく、三輪医師は、和彦が高血圧であり気管支喘息であること、以前に同センターで内視鏡検査を受けていることを確認した上で本件の検査前処置を施している。

(六)  キシロカイン四パーセント溶液及びキシロカイン・ビスカスの使用上の注意事項には、投与してはならない場合、慎重に投与しなければならない場合として種々の既往症を有する患者が掲げられているが、右既往症の中には気管支喘息は入っておらず、キシロカンの投与に当たり気管支喘息は禁忌とされていない。

(七)  当日和彦の健康状態に格別キシロカインの投与を中止すべき異常所見はなく、昭和六一年一二月三日に同人が受けたのと全く同じ分量の薬剤が用いられ(乙一一)、右薬剤が全く同じ方法により投与されている。

(八)  本件を除き同センターにおいては過去本件のような結果を生じた例はない。

3 右認定の事実によれば、キシロカイン及びキシロカイン・ビスカスの投与量は患者の年齢、麻酔領域、部位、組織、体質を総合考慮して医師の裁量的判断に委ねられているものというべきであり、本件におけるキシロカイン四パーセント溶液によるうがい、キシロカイン・ビスカスの投与は、和彦の既往症、過去の内視鏡検査の経過及び当日の和彦の状態を認識しつつ、三輪医師の臨床経験に基づき施行されたものであって、三輪医師及び臨床検査技師の右投与量及び方法の点において注意義務に違反し、過失と認めるべき処置があったということはできない。

したがって、この点を理由とする原告の主張もまた理由がないことが明らかである。

五  結論

したがって、本件において和彦の死亡原因を特定することはできず、また、三輪医師及び臨床検査技師に原告ら主張に係る注意義務違反ないし過失はないから、いずれにせよ原告らの請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がない。

よって、原告らの本訴請求はいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤村啓 裁判官 吉川愼一 裁判官 小池明善)

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